隅田川の両岸、一方に、金物、紙くず、襤褸(ぼろ)を拾って生活する人々。
一方に戦争成金が経営するキャパレエ『リヴァ・サイド』そこの踊り子ジュリアは、宝石とひきかえに、社長の思い者。
リヴァ・サイド一帯を開発しようと目論む社長に、立ち退き反対を訴えるために乗り込んだ青年、片桐民夫。
そこで彼が出会ったジュリアこそ、かつての許婚、沢本百合子。
彼女は空襲で、家族に死に別れ、一人バラック住まいをしていたときに、暴行をうけ、その衝撃で記憶を失っていたのだ・・・。
歌い手としても活躍するANZAと別所ユージが、劇詩人加藤道夫の、ひたむきな恋と喪失のテーマを全身で奏で、加藤氏と、その盟友芥川比呂志氏の薫陶を受けた俳優三谷昇が、美術も担当、作者の思いを鮮明に浮かび上がらせる。
「恋とは、ただ一つの魂を、はげしくもひそかに、よびあうことだ」
26歳、死の予感の中で書いた「なよたけ」で加藤道夫氏はそんな恋の喪失の先の、生も死も超えた詩人の魂に目覚める。
戦場で地獄を目の当たりにした後も、自身の透徹した詩人の魂は、戦後演劇の世界で、ひたむきに理想を追い求めた。
若き俳優志望者には「無窮の空に自らの光を投げる本物のスタアに」と説いた。
朝鮮戦争が始まり、再び戦争が影を落とすころ、氏はこの「襤褸と宝石」で「みじめったらしい、無反省な、華美と虚栄の世界」を描く。
「富にも貧にも悪の臭いがし、人間の浅間しさがつきまとう。政治は全く無力であり、恐ろしい堕落と紊乱の中に、もはや本当の人間性は生きる場所を喪ってしまったようである」
そして、その翌年、加藤氏は自ら35年の命を絶つ。
最後となった作品で作者はこんな台詞を書いた。
「ひたむきな魂は世の中のすれた人間達から笑ひ物にされるだけです」
その絶望をうけとめ、終わりから始まりを始めるだ・・・
来春2009年1月7日にシアターΧで幕を開ける『なよたけ』にむかって。
(演出・山本健翔)
作 | : | 加藤道夫 |
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演出 | : | 山本健翔 |
美術 | : | 三谷昇 |
衣裳 | : | カナイヒロミ |
照明 | : | 清水義幸 |
作曲 | : | 山本健翔 |
音楽 | : | 早坂佳子 |
音響 | : | 越川徹郎 |
舞台監督 | : | 小川信濃 |
演出助手 | : | 石原燃 |
衣裳助手 | : | 有島由生 |
照明操作 | : | 福村奈美子 |
宣伝美術 | : | いちのへ宏彰 |
企画・製作 | : | ショウデザイン舎 |
制作 | : | ジェイ・クリップ |
協力 | : | (株)トニックコード 円企画 だるま企画 劇団ひまわり 劇団劇作家 劇団羊のしっぽ |
ANZA
別所ユージ
世古陽丸 青山伊津美
関根信一 松本邦裕
中嶋ベン 井上倫宏
ささいけい子 剣持直明
三谷昇 ケイタケイ
清田直子 河原田端子
黒木麗太 浅井孝行
関田敦 佐久間隆之
上原英司 塚本千代
大谷英里 成澤玲奈
饗庭さやか 八木佳祐
服部賢一 松岡秀平
榊原仁 桑田充貴
2008年6月5日〜8日 | ||||
5(木) | 6(金) | 7(土) | 8(日) | |
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13:00 | ○ | |||
15:00 | ○ | |||
17:00 | ○ | |||
19:00 | ○ | ○ | ○ |
前売:4,000円
当日:4,300円
(全席指定)
[チケット取扱]
チケットぴあ
0570-02-9999(Pコード:386-292)
ジェイ・クリップ
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Tel:03-3352-1616
Webサイト:http://www.j-clip.co.jp/