シアターΧ新春のカバレット2017
『わたしの犬の眼で』
2017年2月20日(月)
四方田犬彦の翻訳・朗読
本邦初訳 ブラジルの作家 イルダ・イルスト『わたしの犬の眼で』
ラテンアメリカの地に出現した前衝文学の狂い咲き
主人公、アモス・ケレスは48歳の数学者である。 彼は精神に疲労を感じ大学の学部長からそれとなく休養をとるように勧められる。 歯痛はますます酷くなり、結婚と家庭をめぐって失望と後悔は尽きない。 あるとき彼は丘の上で、宇宙のすべての謎を解明してくれる啓示を体験する。 彼はメス豚を愛し同棲している友人のことを思い、学生時代に通い詰めた売春宿と馴染の娼婦のことを思い出す。 そのあげくに、彼は妻と幼い息子を置いて家を出ることを決意する。 彼は老いたる母親のもとを訪れ、さまざまな追憶に耽る。だがこの中編は、カフカの『審判』上に不条理で、黒い諧謔に満ちた終わり方をする―
イルダ・イルスト(Hilda Hilst 1930〜2004)
ブラジルの小説家詩人劇作家
サン・パウロ大学で法学を学ぶかたわら、詩人としてデビュー。パリ留学中にマーロン・ブランドの誘惑を試みる。
つねに若い男と百匹の犬たちに囲まれ、数々の文学賞に輝いたものの、毀誉褒貶に満ちた文学者として知られる。
代表的な小説には『猜褻なるD夫人』『わたしの犬の眼で』『誘惑者の手記』他。
四方田犬彦(よもた・いぬひこ 1953.2.20〜)
比較文学・映画研究者詩人エッセイスト
元明治学院大学教授。
著書は『ルイス・ブニュエル』『モロッコ流嫡』『先生とわたし』『貴種と転生 中上健次』『蒐集行為としての芸術』『わが煉獄』『署名はカリガリ』他。
パゾリーニ、ダルウィーシュ、ボウルズの翻訳。
サントリー学芸賞、伊藤整文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞など。