『荒木町ラプソディー』再再演によせて 佐々木譲

演出家の高橋征男から、荒木町がかつては花街であったと聞いていた。 高橋自身もその花街の文化の中で育ったのだと。 なので東京の中で少し面白い歴史のある町を「警察小説」として描くことになったとき、舞台として最初に思い浮かんだのは荒木町だった。 高橋に頼み、荒木町を何度も取材させてもらった。 正直なところ、自分が体験したことのない花街を、小説の中で直接描写することは難しかった。 なので小説ではその部分はあくまで登場人物の回想の中にしかない。 しかし高橋征男は初演のとき、舞台上に、失われ、忘れられた花街を現出させて見せた。 いあｍでも初演の初日、「おひろめでござーい」という声のあとに舞台が一変、艶やかな花街が現われた瞬間の驚きは忘れがたい。 荒木町で育った高橋ならではの演出だった。 今回の再再演、また新演出になると聞いている。あの警察小説がこんどはどんな舞台となるのか、原作者として楽しみでならない。
『荒木町ラプソディー』原作は文春文庫『地層捜査』

グループ虎

グループ虎は、1998年1月、作家 佐々木譲、演出家 高橋征男、舞台監督 島洋三郎、プロデューサー 高見沢公子により、佐々木譲の作品を上演する目的に結成されました。 グループ虎のメンバーは、団塊の世代、戦後の残り香をかぎながら幼少期を過ごし、高度経済成長の時期に義務教育を受け1960年代後半よりは、それぞれの激動を体験してきております。 グループ虎のコンセプトは＜大人も楽しめる演劇＞＜社会派エンターテインメント＞であり、それは、そのまま、佐々木譲の世界でもあります。