病弱な少女だった天沼裕子を救った一冊の本。
それが、児童小説家・米沢幸男の著作『少年オルフェ』（講談社）でした。
主人公・すすむ少年が、小さな妹ふうこを思う強い気持ちが原動力となり、さまざまな試練に立向かっていく……
この物語が、天沼裕子のその後の人生に大きな影響を与えました。
海外の舞台で、圧倒的に男性優位、欧米人優位の指揮者（コンダクター）の世界において、日本人の女性として指揮者の地位を確立し、パイオニア的先駆的な存在となった天沼裕子。
天沼は、この物語から受けたインスピレーションをあたため続け、音楽家人生の集大成として、その思想を五線紙に書き下ろしました。
彼女の不屈の精神の原点ともいえる物語「少年オルフェ」が、子供と一緒に楽しめるオペラとして生まれ変わり創作され、念願の初上演を迎えることとなりました。