シアターΧメールレター2005年3月30日号
□目次
●『四谷怪談』 シノプシス
●『母アンナ・フィアリングとその子供たち』稽古便り
●公演・企画情報
『母アンナ・フィアリングとその子供たち』4月1日〜7日
ロネン・シャピラ コンサート『愛(アハバ)について』4月9日
『音楽塾』ワーグナーの楽劇四部作「ニーベルングの指環」 4月10日
『ねずみ狩り』うずめ劇場 4月15日〜17日
■■ 『四谷怪談』 シノプシス ■■■■■■■■■■■■■■■■■■
鶴屋南北が1825年作の『東海道四谷怪談』で描いたのは、近代の戸口を前
にし、時代の転換点という難局へと追い詰められた大都市の有り様であり、
そこに生きる人々にもたらされた恐るべき事態、すなわち道徳心が荒廃し、
物理的なものに惑わされ、根無し草的生き方が一般的となった姿である。
喪失感を抱えた人物たちを様々な形で描く、この豊穣な作品の魅力を今日
改めて語る意義は、これが腐敗と犯罪に満ちた、絶えざる生存競争を生き抜
くアンチヒーロー達を通して、自らの崩壊に瀕した社会を描き出している点
にある。都市の孤独を生きる彼らは、居場所もアイデンティティも常に喪失
し、見かけは懸命に取り繕ってはいるが、表層は剥げ落ちつつあり、その下
からは絶えざる不安の内にある悩める魂たちの底知れぬ深淵が覗かれる。
このような不確かな状況にあれば、近くは繰り返し狂わされていき、現実と
(悪)夢、記憶と夢想の間の皮膜は、繰り返し、果てしなく崩れていく。
こうした主題と他の多くの主題のもとに語られるのが、幽霊お岩の姿である。
彼女は様々な過ちのために幽霊として現われ、自分をその姿にした責を持つ
人々や怨みを持つ人々に、自らと同じ苦しみをなめさせる。この幽霊は払拭
し難い過去のようなものであり、またじくじくとくすぶり続ける腫瘍のよう
なものでもある。それを隠そうとしたり、無視しようとすると、危険となる
類のものなのだ。この作品で主眼となるのは、これが夫にだまされ、裏切ら
れ辛さのためにこの世に執着する、お岩という一人の女の姿だけではない。
彼女は繋ぎ目がほつれてしまった時代、人間が無為な強制に駆り立てられ始
めた時代、そして終には抜け殻となると同時に、亡霊となる時代の徴候なの
だ。
今は2005年。しかし人の心の深淵からは、当時も今も亡霊達が現われ出る。
この深淵がこの作品を普遍的な古典作品にしているのだ。今回の舞台にも
亡霊達は姿を現し、深淵の底に見えるあの世から這い出してくるはずである。
(ドラマトゥルク:アンドレアス・レーゲルスベルガー 2005年3月18日記)
日独共同創造演劇プロジェクト『四谷怪談』
公演日程:2005年8月5日(金)〜14日(日)
演出:ヨッシ・ヴィーラー、美術・衣装:渡邉和子
出演:ヨシ笈田、吉行和子 他
<8月19日(金)に山口情報芸術センターでも公演を行います>
■■ 『母アンナ・フィアリングとその子供たち』稽古便り ■■■■■■
美術家のロニ・トレン氏が3月17日、来日しました。ずっとe-mailによる
写真のやりとりでこの作品の舞台美術のメインの構成要素であるトランク
(鞄)の質感などを検討してきました。イスラエルからのメールでもかなり
細かくやっていたのですが、実際に劇場に入りさらに細かくチェックが入り
ます。ロニ氏はシアターXのスタッフと共に小道具屋や東急ハンズ、ボロ市
まででかけ、イメージに合うものを探し、ひとつひとつに加工の指示をして
この「母アンナ……」の世界をビジュアルの部分から構築していきます。
劇場での美術や照明のチェックは、俳優が稽古する時間をはずして行う
ため、連日、休日も返上してとりかからなければなりません。ロニさんに
「休まないでも大丈夫ですか?」と聞いたシアターXスタッフに「僕はお墓
で休めばいいから大丈夫」とおっしゃったロニさん、この3月にカナダでの
国際舞台美術展でオペラ「サロメ」により銀賞をとられたそうです。
いよいよ今週末より公演となります。是非ご覧ください。
公演情報・出演者・スタッフプロフィールはこちらから
http://www.theaterx.jp/05/050401.html
■■ 公演・企画情報 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
2005年4月1日(金)〜7日(木)
『母アンナ・フィアリングとその子供たち』
―ブレヒト的ブレヒト演劇祭2年目企画―
[日程]2005年4月1日(金)19時/2日(土)14時・19時/3日(日)14時・19時
/4日(月)19時/5日(火)14時/6日(水)14時・19時/7日(木)19時
[チケット]前売3,500円/当日4,000円
http://www.theaterx.jp/05/050401.html
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2005年4月9日(土)
ロネン・シャピラ コンサート『愛(アハバ)について』
「母アンナ・フィアリングとその子供たち」作曲・演奏のロネン・シャピラ
によるコンサート。吉田日出子もスペシャルゲストとして出演。
[日程]2005年4月9日(土)15時
[チケット]2,500円(全席自由)
http://www.theaterx.jp/05/050409.html
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2005年4月10日(日)
『音楽塾』―クラシック音楽の名盤LPを、劇場空間にて聴く!―
ワーグナーの楽劇四部作「ニーベルングの指環」とは何か
[日程]2005年4月10日(日)14時
[チケット]2,000円(会員登録制)/登録会員は同伴者と2人で2,000円
http://www.theaterx.jp/ws/ongaku2.html
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2005年4月15日(金)〜17日(日)
『ねずみ狩り』うずめ劇場
[日程]2005年4月15日(金)19:30/16日(土)19:30/17日(日)14:00
[チケット]前売3,000円/当日3,500円/学生前売2,000円/学生当日2,500円
http://www.theaterx.jp/05/050415.html
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