Χカイレパートリー劇場
添田唖蝉坊・知道演歌『明治大正の女性を唄う』
2017年7月30日(日)
土取利行・邦楽番外地Vol.5
土取利行(唄・演奏)/ゲスト:松田美緒(唄)
本シリーズ第5回目は、これまでの土取利行独演から離れ、ゲストに歌手の松田美緒さんを迎え「添田唖蝉坊・知道演歌/明治大正の女性を唄う」を開催します。
松田さんはポルトガルの演歌とも言える民衆歌謡ファドに魅せられ現地での学びに明け暮れた後、ポルトガル語圏諸国を巡り様々な音楽家との交流を重ね、民衆歌謡探求の旅を続けてきました。この巡りの中で、とりわけ“クレオール(混交)化”した歌に関心を寄せ、ここ数年は日本移民のクレオールソングや日本各地の忘れられた歌を蘇らせ唄い続けています。そもそも唖蝉坊・知道演歌には、江戸時代の俗謡、小唄などの民衆歌に中国の明清楽をはじめ、アメリカの軍歌、西洋オペラの節を用いたりと、いわばクレオール”混交”的とも云える音楽の流れがあり、松田さんの追い求める民衆歌謡が、明治大正の演歌ともつながりを持つことから、今回ゲストとして唖蝉坊・知道演歌を唄う初の試みに参加してもらいます。
自由民権運動を機に壮士達の演説歌から始まった演歌が男達の高歌放吟一色だったのを、添田唖蝉坊が「民衆の心に沁みる歌」へと変遷していく過程で、歌詞の内容に多くの底辺層の女性の声を代弁する声が聞こえ出し、唖蝉坊の名声を確立させた名曲「ラッパ節」などは、テキ屋の女性の一声で彼の歌に変化をもたらせたものです。今回はこうした女性の声を反映させた唖蝉坊・知道演歌の数々をトークと歌で、異なる角度から紹介いたします。(土取)
これまでのシアターΧでの「土取利行・邦楽番外地」
Vol.1「添田唖蝉坊・知道を演歌する」
Vol.2「パイノパイ添田知道を演歌する」
Vol.3「添田唖蝉坊の長歌を演歌する」
Vol.4「唖蝉坊演歌と明治大正の叛骨歌」
土取利行(つちとりとしゆき)音楽家
70年代よりフリージャズドラマーとして活躍。75年に渡米し即興演奏のパイオニア達と演奏を重ねる。76年ピーター・ブルック国際劇団の音楽監督・演奏家を務め、『マハーバーラタ』など、多くの作品を手掛ける。アフリカ、アジアに民族音楽や芸能の調査に出かけ、多くの民族楽器、歌唱法を学ぶ。87年故・桃山晴衣と岐阜郡上八幡に芸能堂「立光学舎」を設立し、数々のプロデュース公演を企画・出演。また「銅鐸」「サヌカイト」「縄文鼓」など日本の古代音楽の研究・演奏を手がける。演歌の祖、添田知道の最後の弟子として演歌を学んでいた桃山晴衣の逝去後、彼女が取り組んでいた日本のうたの再生を試みるべく、三味線を手に添田唖蝉坊・知道演歌に取り組みすでに3枚のCDを発表。著書に『縄文の音』『壁画洞窟の音』『螺旋の腕』、ハズラト・イナーヤト・ハーン著『音の神秘』(訳書)。CD多数。2017年、エヴァン・パーカー、ウイリアム・パーカーとのトリオ、郡上八幡音楽祭ライヴ盤リリース。現在、P・ブルック『バトルフィールド』世界公演続行中。
松田美緒(まつだみお)歌手
土地と人々に息づく音楽のルーツを魂と身体で吸収し表現する“現代の吟遊詩人”。その声には彼女が旅した様々な地域の魂が宿っている。ポルトガル語、スペイン語圏の国々で、ウーゴ・ファトルーソ、カルロス・アギーレなど現地を代表する数々のミュージシャンと共演。世界各地で公演を重ねている。2005年にデビューし、以来5作のソロアルバムを発表。2014年、3年がかりのライブとフィールドワークの集大成として初のCDブック『クレオール・ニッポン うたの記憶を旅する』を発表。ブラジル・ハワイ移民の歌を含め、日本各地の忘れられた歌を現代に瑞々しく蘇らせた作品は高い反響を呼び、文藝春秋「日本を代表する女性120人」に選ばれている。2016年、日本テレビ系列『NNNドキュメント』で、松田美緒の活動を追ったドキュメンタリーが放送され、大きな反響を呼ぶ。2016年郡上八幡で土取利行と初のコラボを行う。2017年ポルトガル、ギリシャでの録音CD『エーラ』を発表。