Χカイレパートリー劇場
『添田唖蝉坊と宮武外骨の時代』
2020年5月3日(日)
土取利行・邦楽番外地Vol.8
※当公演は中止となりました
公演中止のお知らせ
シアターXとしては ぜひとも越しいただきたく”入場無料”ででも実行いたしたい公演ですが……、 今後とも ご注目くださいませ。
歌・演奏・トーク:土取利行
トークゲスト:鎌田慧
これまで7回にわたりシリーズで行ってきたシアターXでの「邦楽番外地・添田唖蝉坊・知道を演歌する」では、自由民権運動に即して始まる壮士達の演説歌、その壮士演歌集団青年倶楽部への参加によってスタートをきった唖蝉坊の演歌活動を紹介。そして自由党の解散とともに消滅した壮士演歌集団から独立しての東海矯風団での活動、堺利彦との出会いで社会主義に開眼してからのプロテストシンガー、社会党員としての活動。雑誌「演歌」や「民衆娯楽」の発行と演歌集団組織の立て直しをするも、関東大震災によってその活動に翳りを見せていった演歌活動などを紹介してきた。しかし唖蝉坊は震災後、演歌活動から身を引き、桐生で松葉食、仙人生活をして科学や宗教の迷信打破を唱え、その数年後、三度に渡って八年間の四国遍路の旅に出るという謎を残したまま世を去った。
空海生誕地、讃岐の多度津に生まれ幼年期を過ごした私は、この唖蝉坊の謎ともいえる晩年の四国遍路の旅を調べる途、讃岐の奇人と言われる宮武外骨の存在が気にかかり出し、彼の生家を訪ね資料を調べるうちに、外骨が唖蝉坊より五歳年上で明治大正昭和を反骨のジャーナリストとして活動し、同じく反骨(私は軟骨と呼んでいる)の演歌師と呼ばれた唖蝉坊と同様、戦争の世紀を生き抜いてきた事に着目し、彼らの接点を探るべく今回のプログラムを組んでみた。宮武外骨は数多くの新聞や雑誌を発行し、その編集やデザインの奇抜さなどで赤瀬川原平氏など美術作家からの評価も高かった奇人であるが、今回は彼を反骨のジャーナリストとして評価するルポライターの鎌田慧さんをゲストに話し合う。なお鎌田さんとは共著『軟骨的抵抗者 演歌の祖・添田唖蝉坊』(金曜日)で唖蝉坊について話し合っており、同時に氏が宮武外骨についても詳しいことからこの対談で唖蝉坊&外骨という同時代を生きた二人の新たな気骨の交差が見えてくることを期待したい。(土取利行)
これまでのシアターΧでの「土取利行・邦楽番外地」
Vol.1「添田唖蝉坊・知道を演歌する」
Vol.2「パイノパイ添田知道を演歌する」
Vol.3「添田唖蝉坊の長歌を演歌する」
Vol.4「唖蝉坊演歌と明治大正の叛骨歌」
Vol.5「明治大正の女性を唄う」
Vol.6「唖蝉坊演歌とブラジル移民の歌」
Vol.7「唖蝉坊・知道の浅草を唄い語る」
添田 唖蝉坊(1872年〜1944年)
神奈川県大磯生まれ。18歳の時横須賀で壮士演歌に出会い、以後青年倶楽部で演歌活動を開始。33歳で堺利彦と出会い「非戦論」に開眼。 この時社会党評議委員会にもなり、作詞作曲、唄を通して社会改革に取り組み「ラッパ節」を始め多くの名作を生み出す。 40代には「演歌」の普及に取り組み出版活動にも従事。60代で演歌活動を止め、四国遍路の旅に出る。彼の仕事は長男の添田知道に継続され演歌二代と呼ばれる。
宮武 外骨(1867年〜1955年)
明治・大正期にジャーナリストとして、政治家や官僚、行政機関、マスメディアを含めた権力の腐敗を言論により追及。言論の自由の確立を志向し、それを言論によって訴えた。活字によるアスキーアートを先駆的に取り入れた文章など、趣向を凝らしたパロディや言葉遊びを執筆。関東大震災以降は風俗史研究に重点を移し東京帝国大学(東京大学)に明治新聞雑誌文庫を創設。著作家、新聞史研究家、江戸明治期の世相風俗研究家。
土取利行(つちとりとしゆき)音楽家
1950年香川県生まれ。音楽家。1970年代近藤等則、坂本龍一らと音楽活動。75年渡米渡欧しミルフォード・グレイブス、スティーブ・レイシーら多くの即興演奏家と共演。76年よりピーター・ブルック国際劇団で演奏家・音楽監督『マハーバーラタ』『ハムレット』『バトルフィールド』など 多くの作品を手掛ける。世界各地で民族音楽の調査研究を続け、80年代より日本先史時代の音楽の研究・演奏。87年より桃山晴衣と郡上八幡に「立光学舎」設立。桃山の逝去後、彼女が添田知道の最後の演歌伝承者だったことから、その意を継ぎ唖蝉坊・知道の正調演歌を歌い継ぐ。著書『螺旋の腕』『縄文の音』『壁画洞窟の音』訳書『音の神秘』。
鎌田慧(かまた さとし)
1938年青森県生まれ。ルポライター。労働、原発、冤罪、沖縄問題などを取材・執筆するとともに、各地に足を運び運動につらなる。「「さようなら原発」一千万署名市民の会』ほかの呼びかけ人としても活躍。著書に『自動車絶望工場』『大杉栄 自由への疾走』『原発列島を行く』『六ヶ所村の記録』『大災害!』』『残夢−大逆事件を生き抜いた坂本清馬の生涯』『さようなら原発の決意』『悪政と闘う―原発・沖縄・憲法の現場から』『反逆老人は死なず』等多数。著作集に『鎌田慧の記録』(全六巻)。なお『反骨のジャーナリスト』で宮武外骨論。土取との共著『軟骨的抵抗者・演歌の祖・添田唖蝉坊』。